多重再帰構文とは、
a(X):αXa(a()) a()
上のコードのa(a())のように、再帰関数を2重(あるいはそれ以上)にして呼び出す構文のことです。
一見意味がなさそうに見えますが、この構文にはある効果があります。
とりあえず、下のコードを実際に展開してみましょう。(ギリシャ文字は、例えばsrslなどを表していると考えてください)
a(X):αXa(a(β)) a()
a()を1つずつ展開していきます。
a() = αa(a(β)) = ααa(β)a(a(β)) = αααβa(a(β))a(a(β)) ..... = αααβααβ...ααβa(a(β)) [ここより右は永久に実行されない]
要するに
α+[ααβ]×無限
となっています。
さて、ここで単に
a(X):αXa(β) a()
とした場合と比べてみましょう。上のコードを展開します。
a() = αa(β) = ααβa(β) ..... = ααβαβ...αβa(β) [ここより右は永久に実行されない]
要するに
α+[αβ]×無限
です。二つを並べて比べてみると、
α+[ααβ]×無限 α+[αβ]×無限
違いは「繰り返し部分の先頭にαがくっついているかどうか」だと分かります。
つまり、この構文には「αをa()で置換できる」という効果があるのです。
ピンと来ないかも知れないので、短縮例を見てみましょう。
a(X):ssXrsssslssa(r) a()
ssが4回出てきているので、従来の手法なら、
b:ss a(X):bXrbblba(r) a()
などとして1B縮めるところです。
しかし、多重再帰構文を使って短縮すると、
a(X):ssXra(a(la(a(r))) a()
となり、3Bも縮みます!
関数内の'ss'を'a('に置き換える要領です。
関数の中にXが複数入っている場合も同じように短縮できます。
例えば、
a(X):ssXrssXsslssa(r) a()
なら、
a(X):ssXra(Xa(la(a(r))) a()
という感じです。
このような場合でも、置換される対象は「最初に出てくるXよりも左にある物」です。
応用としては、引数のある再帰なので、
a(X):αXa(a(βX)) a()
のように成長させたり、
a(X):αXa(a(β)) a(γ)
のように特殊な初項を使ったりすることも出来ます。